
化粧品パッケージはなぜシンプルに?クワイエットラグジュアリーとの関係
近頃、化粧品や日用品のパッケージのロゴや装飾を抑えたシンプルなデザインをよく目にしませんか?化粧品容器では、「いかに目立つか」「いかに高級そうに見えるか」と言ったインパクト重視のパッケージも主流でしたが、現在はあえて余白を活かした落ち着いたデザインも選択肢の一つとなっています。
こうした変化の背景には、ナチュラル志向やサステナビリティへの関心の高まりに加え、「クワイエットラグジュアリー(Quiet Luxury)」と呼ばれる価値観も関係していると考えられます。ただし、シンプル化の要因は一つではなく、複数の価値観や市場環境が重なっているといえます。
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化粧品パッケージに見られる"シンプル化"の背景

パッケージデザインにおける変化は、単なる見た目の流行だけではなく、ユーザーの価値観や製品の役割の変化と関係しています。化粧品分野においても、装飾や情報量を抑えたデザインが多くの人の心をつかんでいます。
Z世代を中心とした「視覚的な心地よさ」の追求
物心ついた頃からインターネットやスマートフォンが身近にあるZ世代(1995〜2010年生まれ)を対象とした研究では、シンプルで洗練されたミニマルなデザインを好む傾向が出ています。
背景にある価値観の変化
調査研究(Wibowo et al., 2024)*1によると、シンプルなデザインが支持される背景には、デジタル環境に慣れた世代特有の認知や行動特性が関係しているとされています。
余白の多いデザイン
情報量が多い環境の中で、余白は単なる空白ではなく、視覚的な負荷を減らし、重要な情報を際立たせる要素として機能しています。
「一瞬で」伝わる簡潔さ
スマートフォンやSNSで情報に触れる機会が多い中で、短時間で理解できる分かりやすさが重視される傾向があります。飾らないシンプルな文字や配色は、今の時代にあった「分かりやすさ」を生んでいます。
洗練されたデザイン
要素を絞ったデザインは、整った印象や統一感を生みやすく、「中身へのこだわり」「品質の高さ」という印象につながる場合があります。
このように、視覚的な情報を整理し、シンプルなデザインが評価される傾向は、単なる見た目の好みだけではなく、「どのように情報を伝えるか」「どのように価値を感じさせるか」といった点にも影響しています。
シンプルなデザインが選ばれる背景は、こうした認知的・機能的な要因だけではありません。近年では、控えめな表現の中で上質さを表現する価値観も広がりつつあります。
出典: Wibowo, M. C., Zainudin, A., & Sugiarto. (2024). The Influence of Minimalist Design Elements on Visual Preferences of Generation Z: A Quantitative Study. International Journal of Graphic Design (IJGD), 2(2), 236-247.
クワイエットラグジュアリーとパッケージデザイン

シンプルなパッケージが選ばれる背景の一つとして、「クワイエットラグジュアリー(Quiet Luxury)」と呼ばれる価値観が挙げられます。これは、前述のような認知的・機能的な要因とは別に、近年の消費者意識の変化を反映した考え方の一つです。
クワイエットラグジュアリーという考え方
クワイエットラグジュアリーとは、控えめな表現の中で質の高さを感じさせる価値観を指します。
「Quiet=静かな」「Luxury=上質」という言葉の通り、外見で強く主張するのではなく、細部の仕上がりや素材の良さで価値を伝える考え方です。
主な特徴
ブランドロゴを主張しすぎない
ブランドロゴは全体の中でなじませる程度に配置する。シンプルな外観で統一する
要素を絞ったデザインによって、落ち着きや統一感のある印象にする。素材で語る
装飾ではなく、素材の質感によって、上質さをアプローチする。
このようなスタイルでは、外から見てすぐに分かる高級感ではなく、使い続ける中で感じる質感が重視されます。
シンプル化が見られる複数の要因
シンプルなデザインが選ばれる背景には、前述の認知的・機能的な要因に加え、価値観や美意識の変化も関係しています。クワイエットラグジュアリーは、その一つとして位置づけられる考え方です。
こうした動きは特定の価値観だけで説明できるものではなく、複数の要因が重なり合って生まれています。代表的なものとしては、以下が挙げられます。
関連する主な要因
ミニマル志向の浸透
ナチュラル・サステナビリティ志向
流行に左右されにくいデザインへの関心
ブランド表現の簡素化や内面化
例えば、過剰な装飾を避けたり、素材そのものを活かしたシンプルな構成は、地球に優しい選択として支持されています。また、ブランドの価値を外見で強く主張するのではなく、製品体験や品質を通じて伝える考え方も見られます。
このようにパッケージデザインは単なる見た目ではなく、ブランドの考え方や製品の方向性を反映する要素の一つといえます。
引き算デザインという考え方

シンプルなパッケージは、単に要素を減らしたものではなく、「何を残すか」を考えた設計によって成り立っています。このような考え方は「引き算デザイン」とも呼ばれ、情報や装飾を整理することで、製品の印象を整える手法の一つです。
情報を減らす設計
シンプルなパッケージを実現するためには、表示する情報やデザイン要素の優先順位を整理し、強弱をつけることが大切です。例えば、ブランド名や製品名など最も伝えたい要素を視覚的に協調し、それ以外の情報は、サイズや配置によって抑えるといった方法が考えられます。
情報整理のポイント
伝える要素に優先度をつけ、見せ方に強弱をつける
色数や要素を絞り、統一感を出す
余白を活かしたレイアウトにする
こうした工夫によって、視覚的なノイズを抑えながら、必要な情報を伝えやすくなります。
シンプルだからこそ目立つ要素
要素を絞ったデザインでは、一つひとつの要素が視覚的に目立ちやすくなります。それは、製品の印象に影響することがあります。
印象に影響する主な要素
素材の質感:ガラスや樹脂など、素材そのものの見え方や触感が印象に影響
形状のバランス:容器の直径や高さのバランス、付属品との組み合わせなど、全体のフォルム
このように、シンプルなデザインでは、素材や形状そのものが印象をつくりだします。引き算によって残された要素が、そのまま製品の印象につながるといえます。
シンプルなデザインで意識したいポイント
シンプルなパッケージでは、装飾や情報量が抑えられる分、個々の要素が印象に与える影響が大きくなります。色や素材、仕上がりといった基本的な要素が、そのまま製品の印象につながります。
素材と仕上げが生む質感
シンプルな容器では、素材や表面の仕上げによる質感がダイレクトに伝わります。
素材・仕上げの見え方の違い
素材:ガラスは透明感や重厚感があり光の透過や反射によって奥行のある印象を生みます。樹脂は種類によって透明度や質感が異なり、同じ形状でも、見え方に違いが生まれます。
表面の仕上げ:マットな質感は柔らかく落ち着いた印象を、光沢のある仕上げはシャープで明るい印象を与えます。
色の表現
色数を抑えたデザインでは、色の見え方が重要な役割を持ちます。
同じ色でも、わずかな色味の違いによって印象は変わります。例えば同じ白でも、青みのあるクールな白か、黄色味のある温かい白かといったわずかな「トーン」の違いで、ブランドの世界観はがらりと変わり、受ける印象に差が生まれます。
さらに、光の当たり方や表面の仕上げによっても見え方は変化します。マット仕上げと光沢仕上げでは、同じ色でも異なる印象として認識されることがあります。
まとめ
この記事では、以下の内容を解説しました。
化粧品パッケージに見られる"シンプル化"の背景
クワイエットラグジュアリーとパッケージデザイン
引き算デザインという考え方
シンプルなデザインで意識したいポイント
化粧品パッケージのシンプル化は、トレンドとしての側面だけでなく、複数の価値観や容器設計の考え方が重なり合った結果といえます。クワイエットラグジュアリーのような考え方をはじめ、ナチュラル志向やサステナビリティ、ブランド表現の変化などが影響しています。
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